(1)目指すはベイシェヒル湖《ヒッタイトの足跡を訪ねる旅―第1回》 (2003年8月の旅の記録) (1)目指すはベイシェヒル湖 私は迷うことなく、ベイシェヒル湖畔に程近いエフラトゥン・プナールに焦点を絞り、湖畔の町ベイシェヒルに宿泊するプランを立てた。 旅行雑誌の記事によれば、ベイシェヒル湖の南18km、ファスルラルという村にもまた、ヒッタイトの遺跡となる岩を掘り出して作ったレリーフ状のモニュメントが遺されているということなので、こちらも合わせて訪問することに決めた。 ベイシェヒル湖への行き方は何通りか考えられたが、最短で比較的平坦な、マナヴガット~アクセキ~セイディシェヒル~ベイシェヒルというルートをとることにした。 約260km。4時間から5時間の行程である。 このルート上、ベイシェヒルの手前8km地点にファスルラル村への分岐点があることも考慮の上、1日目にファスルラルのモニュメントの見学を済ませて後、ベイシェヒルに到着するというスケジュールである。 このルートのセイディシェヒルまでの部分は、以前にも何度か通ったことがあったので、よく知っていた。コンヤへ向う長距離バスも通る、整備された道である。 山の上のドライブインでは、地元で採れる純度の高いハチミツや美味しいトゥルム・ペイニル(チューブ状に成型したチーズ)が手に入るので、こちらも小さな愉しみのひとつだった。 ベイシェヒル湖は、ツアーでエイルディル湖からコンヤへ移動する途中、遠くからその存在を認めたことはあったが、湖岸に立ったことは一度とてなかった。 湖水浴ができるのか、ボートを浮かべることのできる岸があるのか、といった実用的な情報は持ち合わせていなかったが、子供のための娯楽として、ビニールボートと水着の準備は怠らなかった。 行き先の選択は大抵私に一任されているのだが、いつも遺跡ばかりでは子供たちが可哀相だと。 マンションを出発して、近所のバッカルでお菓子やガムを仕入れて戻ると、夫はワイパーをなにやらいじっていた。 「壊れたの?」 「うん、これから工場に行ってこなくっちゃ」 「ちょっと待って!雨が降るわけでもないのに、ワイパーなんて、帰ってからゆっくり直したらいいんじゃないの?」 「雨が降ったらどうする!?」 「降るわけないよ。1万円かけてもいい。」 アンタルヤ滞在中、愛車の修理・点検にばかり時間をかけ、ともすると家族でどこへも行けなくしてしまう夫を一蹴し、私たちは出発した。 つづく (2)ファスルラル村への道 |